Sonny Rollins and the Contenmporary Leaders|ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のかたつぶりレビュー

Sonny Rollins and the Contenmporary Leaders / Sonny Rollins

 

1. I've Told Ev'ry Little Star

2. Rock-A-Bye Your Baby with a Dixie Merody

3. How High the Moon

4. You

5. I've Found a New Baby

6. Alone Together

7. In the Chapel in the Moonlight

8. The Song Is You

 

 

Sonny Rollins (ts)

Hampton Hawes (p)

Barney Kessei (g)

Leroy Vinnegar (b)

Shelly Manne (ds)

Victor Feldman (vh) 

 

録音:1958年10月20日〜22日

レーベル:Contemporary

 

 

 背景

 

1958年、ロリンズがちょうど西海岸で活動していた時に録音された本作。

そのため、普段のバンドメンバーでなく、当時西海岸で活躍していたプレーヤーと共演している。

彼らはロサンゼルスのコンテンポラリー・レコードでリーダー作品を出していたプレイヤー達であり、本作のタイトルはそれからとられている。

ウェストコーストの柔和で温かい雰囲気の演奏だ。

何度か表舞台から去っては音楽活動を休止したロリンズですが、よく知られている失踪事件は本作の発表後に起きたものだった。

この3年間の活動休止の理由は一般的に音楽性に悩んだのが理由とされていて、その間にニューヨークのマンハッタンとブルックリンに結ぶウィリアムバーグ橋で練習していたというエピソードは有名みたいです。

 

収録曲

1. I've Told Ev'ry Little Star

 

1932年にジェローム・カーンオスカー・ハマースタイン2世が映画『Music In The Air』のために書き下ろした本曲。

1961年にリンダ・スコット(Linda Scott)がカバーして大きく注目を浴びた。

ちなみにこのスコットの「星に語れば(I've Told Ev'ry Little Star)」は、2011年から始まったTBSのテレビ番組の「マツコの知らない世界」のテーマソングになっていて耳馴染みのある曲かもしれません。

冒頭からのロリンズのサックスはご機嫌で心地よく響く。

2:00ころからのアドリブはなくウォーキング・ベースのみのヴィネガーのソロ、それにホーズのピアノソロが続き、ケッセルのギターが重なって、またロリンズのサックスに戻る。

その全てが余裕のあるクールな演奏でかっこいい。

 

 

2. Rock-A-Bye Your Baby with a Dixie Melody

 

この曲はジーン・シュワルツによって作曲されたミュージカル曲で、1918年にアメリカ人歌手アル・ジョンソン(Al Jolson) が発表したレコードがよく知られている。

ロリンズのソロは気持ちよく歌うようで、安定したバックの中で派手ではないが感じの良い演奏だ。

 

3. How High the Moon

 

この曲はメンバーがそろう前にウォーミング・アップとしてロリンズが吹き出したものを録音していたもので、伴奏はギターとベースのみの珍しい編成だ。

リラックスした雰囲気で音数が少ないからこそ、それぞれのプレイヤーの生々しい呼吸のようなものを味わうことができる気がする。

 

4. You

本作で唯一、フェルドマンがヴィブラフォンで参加している曲だ。

アップテンポの中でヴィブラフォンとロリンズのサックスのかけ合いが楽しい曲だ。

 

5. I've Found a New Baby

アナログ盤ではこの曲からB面になります。

A面は全て明るい曲調であったが、B面はメジャー調でない曲から始まる。

ロリンズのソロの、1:28や2:04ころからなどの箇所では、同じ音を何度も繰り返すところは「モールス信号」と言われることがある。

ロリンズはこんなフレーズでもかっこよく聴かせる。

 

 

6. Alone Together

 

冒頭はホーズのピアノで始まり、ピアノソロのあとにケッセルのギターソロが続く、そしてそのあとにようやくロリンズが入ってくる。

ロリンズはソロのあと、再び後退してリズム弾き主体の長めのベースソロが始まる。

さんざん焦らして、4:35ころから再びロリンズが低めのトーンから入ってソロをとる。

この最後のロリンズのソロでは、重ねてケッセルがアドリブのフレーズを弾き、その絡みあいがとても素晴らしい。

 

7. In the Chapel in the Moonlight

本作で唯一のバラード。

ホーズの短いピアノの前奏、そしてロリンズのサックスで甘く切ないメロディが始まる。ロリンズの演奏は情感たっぷりだけど、一歩後ろに引いたところで堅実な伴奏が支えているからか重くなりすぎない。

控えめではあるがギター、ピアノもツボを押さえたフレーズも素晴らしい。

 

8. The Song Is You

冒頭からの細かいリズムを刻むドラムが印象的です。

ドラムソロもあり、本作で一番マンのドラミングが楽しめる曲になっている。

16部音符を混ぜたドラムのリズムは前へ前へ進んでいくようだが、バンドは平熱をキープし続ける。

アルバムの大円団に相応しく、各奏者がソロを回していく。

テンションを保ったまま急にエンディングのフレーズを迎える。

曲が終わると思いきや、ロリンズのフォロースイングのようなフレーズの裏で、マンが再び忙しいリズムを叩き始めるのがいい意味でちょっと可笑しい。

ドラムがリズムを刻んでも、曲は再開することなくフェイズアウトして終わる。

このアルバムの最後に相応しい、ユーモアのある曲かなと思います。 

 

終わりに

ロリンズのサックスに、西海岸のトッププレイヤーが集まった豪華なメンバーの演奏だけど、肩肘張らずにリラックスして聴くことのできる素敵な作品だ。

録音に定評のあるコンテンポラリーの作品のため、音質にも優れていて誰もが気持ちよく聴けるんじゃないでしょうか。

しかしロリンズはこのアルバムを最後に、3年間も表舞台から姿を消すことになった。

翌年の1959年はマイルス・デイヴィス『Kind of Blue』やジョン・コルトレーンの『Giant Steps』、オーネット・コールマンの『Shape of Jazz to Come』が発表されるなど、ジャズ・シーンは大きな転換期を迎えた年だ。

周囲のジャズ・ミュージシャンが新しい音楽を模索している中で、どちらかといえばオールドタイプのストレートなプレイが得意であったロリンズには熟考する時間が必要だったのかもしれません。あくまでも妄想です。

しかし、僕はこのアルバムの演奏からは彼の苦悩を汲み取ることができません。

いや、むしろ苦悩をその音に込められないことが、彼の苦しみでもあったのかなんて、これも完全に僕の妄想になるのですが。

 

 

jazz#3

20210713