Interplay |ビル・エヴァンス (Bill Evans)のかたつぶりレビュー

Interplay / Bill Evans

 

1. You and the Night and the Music

2. When You Wish Upon a Star

3. I'll Never Smile Again (Take 7)

4. Interplay

5. You Go to My Head

6. Wrap Your Troubles in Dreams

7. I'll Never Smile Again (Take 6)

 

 

Bill Evans (p)

Freddie Hubbard (tp)

Jim Hall (g)

Percy Heath (b)

Philly Joe Jones (ds)

 

録音:1962年7月16日、17日

リリース:1963年6月

レーベル:Riverside

 

背景

 

タイトルの「interplay」は相互作用の意。

広い意味で言うならばジャズの演奏のほとんどは、あるいはジャズに限らずクラシック、ロックなどどのようなジャンルの音楽でも複数人が集まって合奏する場合は「interplay」が生まれます。

ジャズではアドリブのかけあいでのインタープレイがイメージしやすいですね。

エヴァンス以前は自由に即興演奏を披露できるのは自分のソロパートのみであることが多く、それにバンドのリーダー以外は目立つことが良しとされないことが多いみたいです。

けれどもエヴァンスは歴史的な作品の「リバーサイド4部作」で、それまで伴奏楽器として表に出ることの少なかった、ピアノ、ベース、ドラムスのトリオで濃密なインタープレイをみせます。

ピアノがテーマを弾く裏で、フレーズを被せるベース。ドラムのリズムキープの枠から飛び出すプレイ。

3つの楽器は対等で互いに干渉をしあい、曲の行く先は神様に委ねられているよう。

 

干渉される演奏を嫌う奏者も多い中で濃密なインタープレイを好んだエヴァンスの本作『Interplay』。

ギターのホールとトランペットのハバードとは初共演。

エヴァンスの作品群の中でも珍しい楽器編成で、熱いインタープレイを楽しめます。

 

 

 収録曲

1. You and the Night and the Music

冒頭のテーマはギターとトランペットのユニゾン

ジョーンズの熱をもったドラミングが曲に緊張感をあたえている。

そのせいかエヴァンスのピアノソロは普段よりもノっている。

ピアノソロを引き継いで、2:32からのハバードのトランペットソロ。

ジョーンズのドラムが効いていて本当にかっこいい。

 

2. When You Wish Upon a Star

星に願いを。

1曲目からうってかわって 落ち着いたテンポの甘い演奏。

ゆったりとしたエヴァンスの前奏のあとのテーマでは、ギターがメインフレーズを弾く後ろでトランペットも長い音符のフレーズを重ねる。

 ソロはトランペット、ピアノ、ギターの順に回していく。 

 

3. I'll Never Smile Again (Take7)

 

トランペットのテーマの後に、ギターソロ、トランペットソロと続く。

エヴァンスは一歩引いたところで動きのあるフレーズを弾いている。

最後はエヴァンスのソロになるが、前の二人のソロに触発されてか熱いピアノソロになっている。

後半は全員での短いフレーズの回しを聴ける。

 

4. Interplay

今までとは曲調が変わり落ち着いたテンポでクールな雰囲気の曲。

冒頭からギターとベースがリフのフレーズが続き、その上でピアノとトランペットがテーマを弾く。

緊張感のあるハバードのソロがかっこいい。

 

 

5. You Go to My Head

 冒頭のテーマをトランペット、ギター、ピアノそしてまたギター、トランペットとそれぞれ短いフレーズで回していておもしろい。

力強いリズムセクションの上でフロントのエヴァンス、ハバード、ホールはあくまでもクールに演奏している。

 

6. Wrap Your Troubles in Dreams

別トラックを除けば、この曲が本作の最終曲。

ミディアムテンポの余裕のある演奏で肩の力を抜いて聴ける。

ハバードのエンディングのフレーズを吹いて曲は終わる。

 

終わりに

 

ハバードの洗練されたトランペットプレイが特に印象に残る。

エヴァンスは普段よりもひりひりとした感触が少なく、初期のノリのいいプレイに近いような気がする。

リバーサイド4部作で見せた緊密なインタープレイには及ばないが、エヴァンスとホール、ハバードとのかけ合いを楽しく聴けるアルバムだと思う。

 

 

jazz#5

20210716

 

 

 

 

 

Work Time |ソニー・ロリンズ (Sonny Rollns)のかたつぶりレビュー

Work Time / Sonny Rollins

 

1. There's No Business Like Show Business

2. Paradox

3. Rain Check

4. There Are Such Things

5. It's All Right With Me

 

 

Sonny Rollins (ts)

Ray Bryant (p)

George Morrow (b)

Max Roach (ds)

 

録音:1955年12月2日

レーベル:Prestige

 

 

背景

ロリンズの代表作『Saxophone Colossus』の半年ほど前に録音された本作。

こちらもワン・ホーン・カルテットの構成で、ロリンズのブロウを気持ちよく楽しめる。

 

 収録曲

1. There's No Business Like Show Business

アーヴィング・バーリン作曲で、1954年のマリリン・モンロー主演映画『ショウほど素敵な商売はない』の主題歌。

早いテンポを軽快なリズムで叩くローチのドラミング。ドラムソロが最高にかっこいい。

モロウのリズムベースもノリに乗っている。0:47くらいからロリンズとモロウの二人だけになるところでベースのドライブ感あふれる演奏がよくわかる。

 

2. Paradox

ロリンズのオリジナル曲。

シンプルなメロディもアドリブも、ロリンズは本当に気持ちよくサックスを吹いている。別にこの曲に限らないんですけどね。

ピアノのソロは1曲目よりも音の粒がはっきり聞こえて、こちらの方が好きです。

 

3. Rain Check

ビリー・ストレイホーン作曲。

ローチのドラミングは細かい音符の音も正確にそして気持ちよく聞かせる。

3:20からの余裕のあるブライアンとのピアノソロも最高。

 

4. There Are Such Things

アダムズ、ベア、メイヤー作曲で、フランク・シナトラも歌った本曲。

本作唯一のバラード曲。

ロリンズの歌心が炸裂していて、聴いていて身がよじれてしまいそうになります。。

バラードですこし控えめのバック陣の演奏も甘く切なく、それでいてクールなのが最高。

6:01ころから長めのピアノソロにうっとりしてしまう。

ピアノ後ろに下がると、ベースが前に出てくる。

シンプルなベースラインだけど歌っているようなモロウの演奏。

そしてロリンズが戻ってくると、バンドは再び感情の昂りを見せてエンディングを迎える。

 

5. It's All Right With Me

 アメリカの作曲家、コール・ポーターの作曲曲。

アルバムの最後はアップテンポの曲。

この曲もローチのドラムは完璧で、温度は保ったまま曲を前に進めていく。

モロウのベースも合わさることで質量を持ったビートは大きな推進力を感じる。

その上で、ロリンズはうねるようにサックスを吹く。

後半では、お決まりのロリンズとローチのかけあいが楽しい。

ロリンズのエンディングのフレーズも終わって、最後の最後にピアノが小さくコードを鳴らす。

本作の中で一番クールでかっこいい演奏だと思う。

 

終わりに

本作はロリンズにとって『Saxophone Colossus』の次点として、人気のあるアルバムのうちのひとつだ。

リズム隊が力強く、ノリのいい本作では、いわゆる「サクコロ」よりもロリンズのブイブイ言わせるサックスをストレートに楽しめるじゃないかなと思います。

ロリンズの入門盤としてもおすすめできるアルバムです。

 

jazz#4

20210714

 

 

 

 

 

Sonny Rollins and the Contenmporary Leaders|ソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)のかたつぶりレビュー

Sonny Rollins and the Contenmporary Leaders / Sonny Rollins

 

1. I've Told Ev'ry Little Star

2. Rock-A-Bye Your Baby with a Dixie Merody

3. How High the Moon

4. You

5. I've Found a New Baby

6. Alone Together

7. In the Chapel in the Moonlight

8. The Song Is You

 

 

Sonny Rollins (ts)

Hampton Hawes (p)

Barney Kessei (g)

Leroy Vinnegar (b)

Shelly Manne (ds)

Victor Feldman (vh) 

 

録音:1958年10月20日〜22日

レーベル:Contemporary

 

 

 背景

 

1958年、ロリンズがちょうど西海岸で活動していた時に録音された本作。

そのため、普段のバンドメンバーでなく、当時西海岸で活躍していたプレーヤーと共演している。

彼らはロサンゼルスのコンテンポラリー・レコードでリーダー作品を出していたプレイヤー達であり、本作のタイトルはそれからとられている。

ウェストコーストの柔和で温かい雰囲気の演奏だ。

何度か表舞台から去っては音楽活動を休止したロリンズですが、よく知られている失踪事件は本作の発表後に起きたものだった。

この3年間の活動休止の理由は一般的に音楽性に悩んだのが理由とされていて、その間にニューヨークのマンハッタンとブルックリンに結ぶウィリアムバーグ橋で練習していたというエピソードは有名みたいです。

 

収録曲

1. I've Told Ev'ry Little Star

 

1932年にジェローム・カーンオスカー・ハマースタイン2世が映画『Music In The Air』のために書き下ろした本曲。

1961年にリンダ・スコット(Linda Scott)がカバーして大きく注目を浴びた。

ちなみにこのスコットの「星に語れば(I've Told Ev'ry Little Star)」は、2011年から始まったTBSのテレビ番組の「マツコの知らない世界」のテーマソングになっていて耳馴染みのある曲かもしれません。

冒頭からのロリンズのサックスはご機嫌で心地よく響く。

2:00ころからのアドリブはなくウォーキング・ベースのみのヴィネガーのソロ、それにホーズのピアノソロが続き、ケッセルのギターが重なって、またロリンズのサックスに戻る。

その全てが余裕のあるクールな演奏でかっこいい。

 

 

2. Rock-A-Bye Your Baby with a Dixie Melody

 

この曲はジーン・シュワルツによって作曲されたミュージカル曲で、1918年にアメリカ人歌手アル・ジョンソン(Al Jolson) が発表したレコードがよく知られている。

ロリンズのソロは気持ちよく歌うようで、安定したバックの中で派手ではないが感じの良い演奏だ。

 

3. How High the Moon

 

この曲はメンバーがそろう前にウォーミング・アップとしてロリンズが吹き出したものを録音していたもので、伴奏はギターとベースのみの珍しい編成だ。

リラックスした雰囲気で音数が少ないからこそ、それぞれのプレイヤーの生々しい呼吸のようなものを味わうことができる気がする。

 

4. You

本作で唯一、フェルドマンがヴィブラフォンで参加している曲だ。

アップテンポの中でヴィブラフォンとロリンズのサックスのかけ合いが楽しい曲だ。

 

5. I've Found a New Baby

アナログ盤ではこの曲からB面になります。

A面は全て明るい曲調であったが、B面はメジャー調でない曲から始まる。

ロリンズのソロの、1:28や2:04ころからなどの箇所では、同じ音を何度も繰り返すところは「モールス信号」と言われることがある。

ロリンズはこんなフレーズでもかっこよく聴かせる。

 

 

6. Alone Together

 

冒頭はホーズのピアノで始まり、ピアノソロのあとにケッセルのギターソロが続く、そしてそのあとにようやくロリンズが入ってくる。

ロリンズはソロのあと、再び後退してリズム弾き主体の長めのベースソロが始まる。

さんざん焦らして、4:35ころから再びロリンズが低めのトーンから入ってソロをとる。

この最後のロリンズのソロでは、重ねてケッセルがアドリブのフレーズを弾き、その絡みあいがとても素晴らしい。

 

7. In the Chapel in the Moonlight

本作で唯一のバラード。

ホーズの短いピアノの前奏、そしてロリンズのサックスで甘く切ないメロディが始まる。ロリンズの演奏は情感たっぷりだけど、一歩後ろに引いたところで堅実な伴奏が支えているからか重くなりすぎない。

控えめではあるがギター、ピアノもツボを押さえたフレーズも素晴らしい。

 

8. The Song Is You

冒頭からの細かいリズムを刻むドラムが印象的です。

ドラムソロもあり、本作で一番マンのドラミングが楽しめる曲になっている。

16部音符を混ぜたドラムのリズムは前へ前へ進んでいくようだが、バンドは平熱をキープし続ける。

アルバムの大円団に相応しく、各奏者がソロを回していく。

テンションを保ったまま急にエンディングのフレーズを迎える。

曲が終わると思いきや、ロリンズのフォロースイングのようなフレーズの裏で、マンが再び忙しいリズムを叩き始めるのがいい意味でちょっと可笑しい。

ドラムがリズムを刻んでも、曲は再開することなくフェイズアウトして終わる。

このアルバムの最後に相応しい、ユーモアのある曲かなと思います。 

 

終わりに

ロリンズのサックスに、西海岸のトッププレイヤーが集まった豪華なメンバーの演奏だけど、肩肘張らずにリラックスして聴くことのできる素敵な作品だ。

録音に定評のあるコンテンポラリーの作品のため、音質にも優れていて誰もが気持ちよく聴けるんじゃないでしょうか。

しかしロリンズはこのアルバムを最後に、3年間も表舞台から姿を消すことになった。

翌年の1959年はマイルス・デイヴィス『Kind of Blue』やジョン・コルトレーンの『Giant Steps』、オーネット・コールマンの『Shape of Jazz to Come』が発表されるなど、ジャズ・シーンは大きな転換期を迎えた年だ。

周囲のジャズ・ミュージシャンが新しい音楽を模索している中で、どちらかといえばオールドタイプのストレートなプレイが得意であったロリンズには熟考する時間が必要だったのかもしれません。あくまでも妄想です。

しかし、僕はこのアルバムの演奏からは彼の苦悩を汲み取ることができません。

いや、むしろ苦悩をその音に込められないことが、彼の苦しみでもあったのかなんて、これも完全に僕の妄想になるのですが。

 

 

jazz#3

20210713

You Must Believe in Spring|ビル・エヴァンス(Bill Evans)のかたつぶりレビュー

You Must Believe in Spring / The Bill Evans Trio 

 

1. B Minor Waltz

2. You Must Believe in Spring

3. Gary's Theme

4. We Will Meet Again

5. The Peacocks

6. Sometime Ago

7. Theme from M*A*S*H (Suicide Is Painless)

 

Bonus Tracks

8. Without a Song

9. Freddie Freeloader

10. All of You 

 

 

Bill Evans (p)

Eddie Gomez (b)

Eliot Zigmund (ds)

 

録音:1977年8月23日〜25日

レーベル:Warner Bros.

 

 

 背景

エヴァンスが晩年に録音した作品には、死の間際にいた彼の心情を表すようなタイトルがつけられています。

1977年の5月に『I Will Say Goodbye』、1979年の8月に『We Will Meet Again』、そしてこの2枚のアルバムの間に録音されたのが 本作の『You Must Believe in Spring』です。

ジャズピアニストとして活動を始めた当初からドラッグの問題を抱えていたエヴァンスは、身体を壊してもなお薬物を絶つことができず、1980年9月15日にこの世を去った。

本作は録音からリリースまでの間が空いていて、1981年に追悼盤としてリリースされた。

本作を語る際に、よく事実婚の関係にあった妻エレインの地下鉄への投身自殺や、実兄の自殺を持ち出されますが、時系列的にズレがあることが指摘されていて、直接的な関係があったかは定かではありません。

 

 

収録曲

1. B Minor Waltz

エヴァンズ作曲のアルバム冒頭曲。

エヴァンズの美しいピアノの旋律から始まる。

悲しいメロディだが、感傷的になりすぎずに、ある種の冷たさや、硬さを保っているのがエヴァンスらしいと思う。

彼が作曲したワルツには有名な「Waltz For Debby」がありますね。

かわいらしいメロディで、「存在するもの」の愛らしさ、歓びを感じる曲です。

一方で本作のワルツからは、「喪失すること」の中にある自己陶酔的な美しさを感じる。

 

2. You Must Believe in Spring

 フランスの作曲家、ミシェル・ルグランの曲であり、本作のアルバムタイトルになっている。

この曲はフランス映画『Les Demoiselles de Rochefort(ロシュフォールの恋人たち)』の挿入曲「Chanson de Maxence」がオリジナルであり、それに英語詩をつけたものが「You Must Believe in Spring」みたいです。

1曲目と同様にピアノの美しい旋律から始まるが、後半はベースとドラムスがビートを持ち上げて、内向的なままで終わらずに前へ進む力を感じる。

この曲はベースがかっこいい。

1:36くらいから始まるベースソロはもちろん、ピアノソロの裏でパートの短い音符と長い音符を組み合わせたフレーズは表情豊かですばらしい。

後半のウォーキングベースもバンドの熱が上がりすぎないよう温度を保ったまま、前へ前へ進めていく。

 

3. Gary's Theme

冒頭からピアノはドビュッシーのような浮遊感のある和音を重ねて、ゆったりと曲を進めていく。

ピアノの旋律にゴメスのベースラインが絡み合って、静かな曲に有機的な、血の温かさのようなものが生まれているように感じる。

 

4. We Will Meet Again

エヴァンスの作曲曲。

この印象的なタイトルは彼の最後のスタジオ録音のアルバムにも使われた。

#1の「B Minor Waltz」と同じように、もの悲しさを湛えた曲だが理性を意識的に保っているよう。

ちなみにアルバム『We Will Meet Again』の最終トラックにもこの曲が収録されています。

エヴァンスのピアノソロで本作よりも感情的な演奏になっている。

 

5. The Peacocks

アナログ盤ではこの曲からB面になります。

アメリカのジャズピアニスト、ボーカリストであるジミー・ロウルズ(Jimmy[Jimmie] Rowles)の作曲曲。

ベースとドラムスはあくまでも曲を支える役割に徹しているが、この曲のよさをよく引き出している演奏だと思う。

 

6. Sometime Ago

リイシュー版に収録されているボーナストラックを除けば、本作で唯一の明るい曲調の曲です。

このアルバムに通底するひりっとする緊張感はこの曲にもあるけど、いくぶんかは肩の力を抜いて聴くことができる曲じゃないかなと思う。

2:12くらいからのベースソロは、高い位置で早いパッセージもありつつも優しい音色の演奏でこの曲のアクセントになっている。

 

7. Theme from M*A*S*H(Suicide Is Painless)

ジョニー・マンデル(Johnny Mandel)の作曲、1970年のロバート・アルトマン監督の映画『M*A*S*H』のテーマ曲が原曲。

ビル・エヴァンス・トリオの演奏はベースのリフや手数の多いドラムが印象的で、アコースティックギターの指弾きが主体の静かなアレンジの原曲とは雰囲気が異なる。

リズミカルなサウンドのため、美しく、哀しげなメロディもクールに響く。

アルバムの最終曲として、悲しげな曲の多い本作が感傷的になりすぎないようにバランスを保っているようにも思える。

ちなみに映画『M*A*S*H』は、戦争を題材にしたブラックコメディ映画みたいです。

この映画には可笑しいシーンも多くあり、テーマ曲だけを聴いて浮かぶイメージとは少し異なるかもしれない。

 

Bonus Track

8. Without a Song

9. Freddie Freeloader

10. All of You 

本作のリイシュー版で収録されたボーナストラック。

このアルバムの雰囲気にはそぐわないが、明るく肩の力をぬいて聴くことができます。

 

 

終わりに

 

全曲を通して「哀しみ」と、その哀しみを通してしか見ることのできない「美しさ」に感じる作品です。

僕が言うまでもなく大名盤ですね。

 少し個人的な話を。

僕がこのアルバムを知ったのは高校生の時です。

エヴァンスの「リバーサイド4部作」を含め、初期のアルバムを数枚聴いた後に、彼の晩年の演奏も聴いてみようとこのアルバムを購入した。

僕はこのアルバムを結構気に入って、他の晩年のアルバムにも手を出した。

当時ある女の子と音楽の話をした時、ジャズを聴いたことのない彼女にCDを貸すことになった。

そこで僕はこのアルバムを選んだ。

あまり反応はなかったような気がするから、今思うと初期の楽しく聴けるCDを渡した方が良かったとも思う。

でも当時このアルバムに惹かれていた僕は、自分の心のパーソナルな部分をその子と共有したかったんだと思う。

このアルバムにはそんな少し青い思い出もあります。

 

jazz#2

20210712

Saxophone Colossus |ソニー・ロリンズ (Sonny Rollns)のかたつぶりレビュー

 Saxophone Colossus / Sonny Rollins

 

1. St. Thomas

2. You Don't Know What Love Is

3. Strode Rode

4. Moritat

5. Blue 7

 

 

 

Sonny Rollins (ts)

Tommy Flanagan (p)

Dug Watkins (b)

Max Roach (ds)

 

録音:1956年6月22日

レーベル:Prestige

 

 

背景

1956年にリリースされた本作は、明るいブルーのジャケットが印象的なソニー・ロリンズの代表作です。

インターネットで「ジャズ 名盤」などと検索すると、だいたいどこのサイトでもこのアルバムを紹介するんじゃないかと思います。

 

収録曲

1. St. Thomas

耳に残るフレーズで始まるアルバム冒頭曲。

明るく楽しげなメロディに、ロリンズの太くてブイブイいうようなテナーサックスの音色がよく似合います。

陽気なリズムのドラムが印象的で、ロリンズのソロでドライブするドラムがかっこいい。

 

2. You Don't Know What Love Is

1曲目からうって変わって、官能的なメロディ。

穏やかなテンポの中で、ロリンズのサックスは高低に激しく動き回ります。

特に曲の最後のサックスのフレーズは、情熱的でロリンズの熱い息遣いを感じるます。

ロリンズのサックスが抜けるピアノソロは、バンドのバランスをとるように熱を抑えたアンサンブルでこれもまた素敵です。

 

3. Strode Rode

冒頭から印象的なリズムの主題で始まります。

かなり早いテンポに乗っかって、ロリンズの滑らかなソロが続く。

こちらもローチのドラミングが素晴らしく、ドラムソロが最高にかっこいい。

曲の終わりのドラムフレーズもしびれます。

 

4. Moritat

1曲目と同じく明るくポップな曲で、一度聞けばそらで歌えるメロディ。

曲を通してドラムのスイングするシンバルが印象的。

ピアノソロではシンバル音が抑えられて、よりはっきりと聞き取れるローチの音の粒が心地よいです。

ベースソロの最後に2拍3連のリズムのスネアが入って、ロリンズのサックスに移るところもかっこいい。

 

5. Blue 7

アルバムの最終曲。

ベースの楽しげなソロフレーズから始まって、表情豊かなロリンズのサックスが歌う。

サックス以外のソロパートも多くあり、ロリンズ以外のプレイヤーの演奏を楽しめる曲です。

8:10から始まる、ぽつ、ぽつ、とささやくようなピアノソロは小鳥が飛び去りように終わり、そのあとにウォーキングベースが残るところがお気に入り。

こんな各楽器のかけ合いがこの曲の聞きどころだと思います。

控えめなエンディングが爽やかな余韻を残して、このアルバムは終わる。

 

終わりに

久しぶりに聞くと、今まであまり意識しなかったローチのドラミングが印象に残りました。

個人的なベストトラックは、演者のかけ合いが楽しい#5の「Blue 7」。

 

 jazz#1

20210710